1日の染色と、1週間の「灰汁抜き」
服を1着染めること自体に要する時間は、実のところ1日あれば十分です。(極めて濃い色に仕上げるために、数日に分ける場合を除いて)
では、染色から仕上がりまで私たちは何をしているのか。残りの日数の多くは「後処理」という工程に費やされています。
私たちの藍染は「天然灰汁発酵建て」という、化学薬品を一切使わない伝統的な手法でおこなっています。この名前の通り、染液を建てる過程で堅木の灰からとった「灰汁(あく)」を使用します。染色を終えた後、生地に定着したこの藍染特有の灰汁をしっかりと洗い流すことが、色の仕上がりにおいて非常に重要なのです。
天候にもよりますが、この後処理(灰汁抜き)だけで約1週間という時間を要します。
「垢抜ける」という言葉の語源
染色後、洗いをかけてから天日に干し、お湯に浸ける。この工程を3〜4回繰り返すと、茶褐色をした灰汁が水に浮き出てきます。これが、生地から灰汁が抜けている状態です。
「垢抜ける」という言葉があります。野暮ったさがなくなり、洗練されることを指す言葉ですが、一説にはこの藍染の「灰汁が抜ける」様子が語源になっていると言われています。
洗えば洗うほど不純物である灰汁が抜け、くすみが取れて、藍の色が鮮やかに冴えわたっていく。その美しく変化する様を、かつての人々は「垢抜ける」と表現しました。

洗うことで育つ、あなただけの青
私たちの工房でも、お渡しするまでに最大限の灰汁抜きをおこなっています。しかし、時間の経過とともに生地の奥から少しずつ灰汁は浮き出てきます。これを何年もかけて、日々の生活の中で抜いていく必要があるのです。
時折、色移りや色落ちを心配して「何年も藍染製品を洗っていない」という方がいらっしゃいますが、藍染に関しては逆です。毎日のように着て、ためらわずに洗ってください。時にはぬるま湯に浸していただくのが理想ですが、難しいようであれば普段のお洗濯でも構いません。
洗うというひと手間を繰り返すうちに、自然と灰汁が抜けきり、藍色はより一層きれいに冴えわたっていきます。
くすみが抜け、澄んだ青へと育っていく。その冴えわたる藍色は、持ち主がその服と向き合い、日常の中で長く寄り添った何よりの証です。どんどん着て、洗って、あなたにしか出せない藍色を育ててみてください。